インフルエンザとは
インフルエンザは、インフルエンザウイルスによる感染症で、毎年12月頃から流行し始め、翌年の1月~3月にかけてピークを迎えるという特徴があります。感染力が強く、保育園や小学校などの集団生活では、わずかな期間で急速に感染が広がることがあります。
主な症状としては38℃以上の発熱、悪寒、喉の痛み、咳、関節痛、倦怠感、頭痛などがみられることがあります。一般的には軽症で済みますが、学生、小さなお子様には稀に異常行動が見られることがありますので、発熱期間には特に注意が必要です(突然走り出す、部屋から飛び出す、徘徊する、転落など)。
また、熱性痙攣や肺炎、中耳炎などを併発する場合もあります。インフルエンザウイルスの型はA型、B型、C型の3つに分類され、ヒトに流行するのはA型とB型です。ウイルスの表面にはHとNと呼ばれる2種類の突起があり、H1N1などと分類される多くの型が存在します。年によって流行する型は異なり、単一の型とは限らないため、一度感染してもまた異なる型に感染する可能性があります。
インフルエンザの感染経路
主な感染経路は飛沫感染になります。くしゃみや咳で、ウイルスを含んだ飛沫が飛び散り、それを吸い込むことによって感染します。また、ウイルスが付着したドアノブや電気のスイッチなどに触れた人が、その手で鼻や口を触ることでも接触感染が起こります。
インフルエンザの潜伏期間
インフルエンザの潜伏期間は一般的に1~3日です。
感染すると、ウイルスが体内で一気に増殖し、急速に発症することが多いのが特徴です。
ウイルスが他人に感染する可能性がある期間は、インフルエンザの症状が現れる前日から、発症後3~7日と言われています。
インフルエンザの予防方法
手洗い
外出からの帰宅時、あるいは調理や飲食の前後には、念入りに手を洗いましょう。ドアノブ、手すり、つり革、電気のスイッチ、エレベーターのボタン、トイレのドアなどは、ウイルスが付着しやすいので感染リスクに注意しましょう。手洗いが難しい場合は、アルコール消毒も効果的です。
マスクの着用
マスクの着用は、感染を防ぐというよりも、他人への感染を防ぐ効果が高いと言われています。しかし、マスクを着用することである程度の感染予防もできるため、インフルエンザが流行する時期に人混みで過ごす際にはマスクを着用することをお勧めします。
また、喉の乾燥は粘膜の防御機能を下げ、感染リスクを高めます。マスクの着用は口腔内の保湿にも繋がり、インフルエンザの予防策としても活用できます。
室内の湿度を保ち、乾燥させない。
湿度が低いと、喉の粘膜の防御機能が下がります。乾燥した室内では、湿度を50~60%に保つために加湿器を使用することが望ましいでしょう。
予防接種を受けましょう
インフルエンザのワクチンは、生後6ヶ月の赤ちゃんから接種できます。
生後6ヵ月~13歳までは2回、13歳以上は1回接種します。
- 名古屋市では、該当年度に12歳、15歳、18歳になられる方のインフルエンザ予防接種は無料となっています。
- 当院のインフルエンザワクチンに関する詳細は、9月以降に掲載する予定です。
受診の目安
発熱後、少なくとも8時間待つことが推奨されます。できれば、半日(12時間)解熱剤などを使用して水分をよく摂取し待つのが望ましいとされています。発症の初期段階ではウイルスの量が少なく、検査をしても正しく陽性と判定できないことが多いためです。また、早すぎる検査では正確な診断が難しく、翌日以降に再度受診することになる場合もあります。
鼻に棒を挿入する検査は、お子様だけでなく成人にとっても不快なものです。検査を繰り返さないためにも、ある程度時間をおいてから受診することをお勧めします。
さらに、抗インフルエンザ薬での治療は、発症後48時間以内に開始が望ましいことが知られています。インフルエンザが疑われる場合は、発熱から12時間後、48時間以内に、なるべく早く受診するのが最も望ましいとされます。
インフルエンザの検査と治療
インフルエンザの診断は、主に抗原定性検査によって行われます。検査は通常、鼻咽頭スワブ(鼻から細い綿棒を挿入し、鼻と喉の奥の粘膜をぬぐう検査)を用いて行います。結果は通常10分程度でわかります。
インフルエンザと診断された場合は、インフルエンザ治療薬(抗ウイルス薬)や対処療法の薬が処方されます。これらは内服薬、粉末吸入薬、または(入院の場合は)点滴薬があり、発症から48時間以内に治療を開始することが重要です。抗ウイルス薬はウイルスを殺す作用はありませんが、ウイルスの更なる増加を防ぐ効果が期待できます。治療後すぐに解熱するわけではないものの、解熱までの期間を約1~2日、短縮する効果があります。
インフルエンザのよくある質問
インフルエンザにかかりました。いつから登園(登校)できますか?
発症日を0日目として、発症後5日目まで登園・登校できません。
また、乳幼児は解熱後3日、学童は解熱後2日が経過するまでの間も、他者への感染の危険性が高いため出席停止期間となります。
タミフルを飲むと、異常行動を起こす危険性があるのですか?
過去にインフルエンザの治療薬としてタミフルを服用していた10代のお子様がマンションから転落する事故が相次いだため、10代へのタミフルの使用は原則控えるよう緊急安全情報が出されました。しかし、その後の詳しい調査で、タミフル以外の治療薬を服用していても、あるいはどの治療薬も服用していなくても、インフルエンザ罹患中に同様の異常行動が起こることが明らかになりました。2018年には、10代へのタミフル使用も再び解禁されました。
高熱時には不安や恐怖、幻覚、失見当識(自分の置かれた時間や場所、状況がわからなくなること)が起こることがあり、これを「熱せん妄」と呼びます。
インフルエンザ罹患中は、特に発症後の最初の2日間に「熱せん妄」が起こりやすいとされており、現在では異常行動の多くがこれによるものと考えられています。
したがって、インフルエンザ罹患時には、治療薬の使用の有無や種類に関係なく、異常行動が起こり得ることを考慮する必要があります。お子様がインフルエンザに罹患した場合は、発熱期間中は、必ず成人が近くにいる状態で過ごすようにしましょう。また、玄関などの扉や窓にはすべてに鍵をかけ、上段のベッドには寝かせないなどの対策を講じるようにしてください。
家族がインフルエンザと診断されました。予防薬は飲めますか?
原則として、①インフルエンザに罹患した家族と同居している方、②下記に該当する方(インフルエンザに罹患した場合に重症化するおそれのある方)に対しては予防投与が可能です。
- ご高齢の方(65歳以上)
- 慢性呼吸器疾患、または慢性心疾患の患者様
- 代謝性疾患(糖尿病など)の患者様
- 腎機能障害のある患者様
ただし、上記に当てはまらない症例でも、ご本人が受験などでどうしても罹患を防ぎたい場合や、保護者様がやむを得ない事情で罹患を避けたい場合などもあることと思います。そのような場合、医師とよく相談の上、予防投与は可能です。
しかし、その場合は「医薬品副作用被害救済制度」の対象外となり、薬剤による重篤な副作用が発生した場合に補償されないというデメリットがあるため、安易な予防投与はお勧めできません。また、予防投与を行う場合、接触後48時間以内に投与を開始しないと効果がないことが知られています。
なお、予防投与は保険適用外のため、自己負担での診療となりますのでご注意ください。
卵アレルギーがあると、インフルエンザワクチン接種が受けられないと聞きました。
ほとんどの場合、卵アレルギーがあってもワクチン接種には問題ありません。
インフルエンザワクチンの製造工程では、ごく微量の卵由来成分が残るため、重度の卵アレルギーの患者様にはアレルギーによる副反応が出る可能性があります。しかし、近年のワクチンは純度が高く精製されているため(数ng/mL以下=ワクチン1mL中、卵タンパク質は1gの10億分の1以下)、非常にわずかな量しか残らず、ほとんどの方が問題なく接種できます。ご心配な方は事前にご相談ください。
妊娠中は、インフルエンザワクチンを接種できますか?
妊娠中の全期間において、インフルエンザのワクチン接種は安全が確認されています。さらに、妊娠中にインフルエンザに罹ると重症化する可能性があるため、妊娠中の方へワクチン接種が推奨されています。日本で用いられるインフルエンザワクチンは、非病原性の不活化ワクチンであり、胎児への悪影響の報告はありません。
また、妊娠中は防腐剤(チメロサール)を含まないワクチンが推奨されているものの、この防腐剤による胎児への悪影響はないとわかっています。したがって、一般のワクチンでも問題はありません。
※ただし、鼻噴霧タイプのインフルエンザワクチン(フルミスト)は、妊婦中あるいは妊娠の可能性のある方は接種できません。
子どもが生後間もないため、まだインフルエンザワクチンの接種を受けるには小さいので心配です。どうすれば予防できますか?
生後6ヶ月ほどは、母体からの免疫があるため、感染症には比較的かかりにくい時期です。また、インフルエンザワクチンを接種できない生後6ヶ月未満の乳幼児がいるご家庭では、ご家族のインフルエンザ感染を防ぐため、また家庭内へのインフルエンザの侵入を防ぐためにも、ご両親や兄弟姉妹の方々がワクチン接種を徹底することが大切です。